耳コピを始めてすぐ、聞こえた音を1音ずつ探そうとすると、曲のどこを聞いているか分からなくなりがちです。先に曲の構成、BPM、キーを整理し、短い区間とひとつのパートへ絞ると、音を探す作業へ集中できます。
解析ツールは答えを自動で完成させるものではありません。聞き取りにくい情報を見やすくし、自分の耳と楽器で確かめるために使います。
1. 耳コピの目的と範囲を決める
曲全体を譜面にするのか、ギターソロだけを覚えるのか、コード進行を知りたいのかで手順が変わります。最初に対象のパートと区間を決めます。
- 演奏練習:運指、リズム、アーティキュレーションまで確認する
- コード分析:ベース音と和音の響きを中心に聞く
- アレンジ分析:楽器の出入り、音域、重なりを記録する
- 打ち込み再現:音程に加えてタイミングと長さも確認する
2. 曲の構成を先にメモする
イントロ、Aメロ、サビ、間奏などの開始時刻を大まかに書きます。同じサビでも2回目にコーラスやギターが追加されることがあるため、完全に同じ区間とは決めつけません。
DAWへ曲を読み込む場合は、マーカーを置いて区間を見えるようにします。曲全体の地図を作ると、聞き直す場所をすぐに呼び出せます。
3. BPMとキーの候補を調べる
「BPM・キーを調べる」ツールへ音源を読み込み、BPMとキー(調)の候補を確認します。
BPMが70と140のように半分・2倍の関係で出る場合は、ドラムに合わせて数えやすい方を選びます。キーは候補の主音や基本コードを楽器で鳴らし、曲全体へ自然になじむか耳で確認します。転調がある曲では区間ごとに考えます。
4. 聞きたい区間だけを切り出してループする
長い曲を毎回シークせず、「音源を好きな範囲で切り出す」で1〜4小節程度を用意します。フレーズの少し前から再生されるようにすると、最初の音を予測しやすくなります。
DAWやプレイヤーでループ再生し、最初はリズム、次に音の上下、最後に細かな音程という順で聞きます。長いフレーズを一度に覚えず、意味のある短いまとまりへ分けましょう。
5. 速いフレーズはテンポを下げる
「テンポを変える」を使うと、ピッチを保ちながら再生速度を下げられます。最初は70〜90%程度から試し、アタックやリズムが崩れない範囲で使います。
遅くしすぎると音のつながりやグルーヴが分かりにくくなるため、音程を確認した後は原曲の速さでも聞き直します。練習用音源の作り方は「楽器練習用の音源を作る方法」も参考にしてください。
6. ひとつのパートへ集中する
ボーカル、ドラム、ベース、ギターなどが重なって聞き取りにくい場合は、「ステムスプリッター」でステムへ分けます。対象パートを大きくするだけでなく、対象以外を小さくした音源と原曲を切り替える方法も有効です。
分離音には別パートのにじみや音の欠けが含まれます。細かなニュアンスは原曲へ戻って確認します。分析の考え方は「参考曲をパートごとに聴く方法」で詳しく紹介しています。
7. ベースはMIDI表示と並走して聞く
低い音は再生環境によって聞こえにくく、キックとも重なります。「ベースをMIDIに変換する」で音程候補を可視化し、原曲を聞きながらMIDIノートの上下を確認します。
これは耳コピした後の答え合わせではなく、耳コピ中に候補を絞るための並走です。オクターブ違い、倍音、キックの誤検出があるため、表示を見て終わらず、ベースや鍵盤で同じ音を鳴らします。詳しい流れは「ベースラインを耳コピするときMIDIを併用する方法」へつなげられます。
8. ベース音、メロディ、内声の順に組み立てる
コードを取るときは、最初に一番低いベース音、次に一番上で目立つ音、その後に中の音を探します。キーの中で使われやすいコードを候補にしつつ、オンコードやキー外の音も耳で確認します。
単音フレーズは、音名より先に「上がった、下がった、同じ音が続いた」という輪郭をつかむと探しやすくなります。
9. 音程だけでなく長さとニュアンスを確認する
同じ音程でも、スタッカート、スライド、ハンマリング、ベンド、ビブラートなどで聞こえ方が変わります。打ち込みではノートの長さ、ベロシティ、発音位置も確認します。
譜面やMIDIへ入力したら、原曲と同時に鳴らし、音の始まりだけでなく終わりも合っているか聞きます。
10. 原曲へ戻して全体の流れを確認する
分離音や低速再生で取れたフレーズも、最後は加工していない原曲の中で演奏します。前後のフレーズ、ドラムとの位置、コードに対する響きが自然なら、耳コピした内容が曲の中で機能しています。
確信が持てない場所は無理に断定せず、候補を2つ残して別の日に聞き直す方法も有効です。耳が疲れると高低や細かなタイミングを判断しにくくなります。
耳コピ用ファイルの扱いに注意する
市販曲から作った切り出し音源、テンポ変更音源、ステム、MIDI変換結果には元音源の権利が関係します。個人の分析や練習の範囲で使い、許可なく公開・配布しないようにします。
今回使った解析・編集ツールをほかのDTM用途でも探したい場合は、「DTMで使える無料ブラウザツールまとめ」を参照してください。
