歌やギターを録音していると、自分が出した音よりヘッドホンから返る音が少し遅れ、演奏しにくくなることがあります。この遅れをレイテンシーと呼びます。演奏者の技量ではなく、音をパソコンへ取り込み、DAWで処理し、再び出力するまでに時間がかかることが原因です。
レイテンシーを完全にゼロへするのではなく、録音中だけ負荷とモニター方法を調整し、演奏に支障のない状態を作ります。
まず遅れている音がどこから返っているか確認する
生の歌声やアンプの音と、ヘッドホンから返るDAW経由の音が二重に聞こえる場合は、ソフトウェアモニタリングが遅れています。録音した波形そのものが後ろへずれる場合は、機器設定や録音遅延補正も確認が必要です。
最初に空のプロジェクトを作り、エフェクトを外した1トラックだけで試します。これで改善するなら、プロジェクト内の処理負荷が主な原因です。
録音中はバッファサイズを小さくする
バッファサイズは、パソコンが音声をまとめて処理する単位です。小さくすると反応は速くなりますが、CPU負荷が上がり、ノイズや音切れが出やすくなります。大きくすると再生は安定しますが、入力音の返りが遅くなります。
録音中は64〜128サンプル程度から試し、音切れが出るなら一段上げます。ミックス中は演奏の即時性が不要なため、256〜1024サンプルへ大きくして安定性を優先できます。適切な値はパソコン、サンプルレート、トラック数によって変わります。
重いプラグインを一時的に外す
リニアフェイズEQ、先読みを使うリミッター、ノイズ除去、オーバーサンプリングなどは、音質のために意図的な遅延を加える場合があります。マスターバスや録音トラックだけでなく、別トラックのプラグインも遅延補正へ影響します。
録音用の軽いプロジェクトを作るか、重いトラックをフリーズし、マスターの処理をバイパスします。音作り用のアンプシミュレーターや軽いリバーブだけを残し、演奏に必要な処理へ絞ります。
ダイレクトモニタリングを使う
ダイレクトモニタリングは、入力音をDAWへ往復させず、オーディオインターフェイスの内部から直接ヘッドホンへ返す方法です。歌やアコースティック楽器の録音では、ほぼ遅れを感じずに演奏できます。
一方、DAW内のアンプシミュレーターやボーカルエフェクトは聞こえません。入力音とDAWの返りを両方有効にすると二重になるため、モニター経路をひとつにします。
録音後の波形位置も確認する
モニターが快適でも、録音した音がグリッドより後ろへ置かれる場合があります。クリックをスピーカーからマイクへ録る簡易テストや、短い打音を入力と録音波形で比べ、一定量ずれるか確認します。
毎回同じだけずれるならDAWの録音遅延補正、ばらばらにずれるなら演奏環境や負荷を見直します。耳で自然な演奏を機械的にすべてグリッドへ移動しないことも大切です。
録音用とミックス用の設定を分ける
- 録音時:小さいバッファ、軽いプラグイン、必要ならダイレクトモニター
- ミックス時:大きいバッファ、高品質モード、重い処理を有効化
ギターやベースの接続は「ギター・ベースをPCへつなぐ基本」、ボーカルの録音準備は「DTMでボーカルを録音する前に確認したいこと」も参考にしてください。
