DAWでは十分な音量に感じたのに、書き出した曲を市販曲や配信動画と比べると小さく聞こえることがあります。このとき、単純にマスターフェーダーを上げるだけでは、音割れを起こす可能性があります。
まず「音が小さい」のが、特定の楽器が埋もれている問題なのか、曲全体の仕上がり音量の問題なのかを分けて考えましょう。
ミックスとマスタリングの問題を分ける
ボーカルだけ聞こえない、キックに比べてベースが弱いといった問題は、主にミックスで調整します。各トラックのフェーダー、EQ、コンプレッサー、パンを見直し、曲の中のバランスを整えます。
曲全体のバランスは良いものの、完成音源として音量感が不足している場合は、マスタリングで最終的な音量やピークを整えます。マスタリングは、崩れたミックスを隠す工程ではありません。
ピークが0dBFSを超えていないか確認する
デジタル音声では、上限を超えた信号がクリッピングし、歪みや音割れの原因になります。マスタートラックのピークがすでに上限付近なら、フェーダーをさらに上げる余裕はありません。
音量を上げたいときは、突出したピークをリミッターで抑え、その分だけ全体を持ち上げる方法があります。ただし強くかけすぎると、ドラムの勢いや立体感が失われます。
聞こえる大きさはLUFSでも確認する
瞬間的なピークだけでは、曲全体がどれくらい大きく感じられるかは分かりません。平均的な聞こえ方の目安にはLUFSが使われます。
同じピーク値でも、音数が多く常に鳴っている曲と、静かな部分が長い曲ではLUFSが異なります。目標値へ無理に合わせるより、音楽性を保ったまま用途に適した範囲へ整えることが大切です。
True Peakにも余裕を残す
True Peakは、デジタルデータを実際に再生へ戻したときに生じるピークも見込んだ指標です。サンプル上では0dBFS未満でも、圧縮や再生環境によって上限を超えることがあります。
配信や動画で使う曲では、最終段に少し余裕を残すと、MP3やAACへ変換したときの歪みを避けやすくなります。
タダオトで音圧を確認して整える
「音圧を整える」ツールへ完成したWAV、MP3、M4Aを読み込むと、現在のLUFSと推定True Peakを確認し、音割れを抑えながら聞きやすい音量へ調整できます。
仕上がりは、会話や環境音と混ぜやすい穏やかな設定、標準的な設定、前へ出したい設定から選べます。処理前後を試聴し、数値だけでなくキック、スネア、低音、余韻が不自然に潰れていないか確認してください。
処理前後は同じ音量感でも比較する
音が大きくなると、それだけで良い音に感じやすくなります。比較するときは音量を近づけ、音色やダイナミクスがどう変わったかを聴きます。
リミッターが頻繁に強く反応する、低音が揺れる、ボーカルだけ飛び出す場合は、マスタリングを強くする前にミックスへ戻った方が自然に仕上がります。
書き出し後の基本チェック
- マスターでクリッピングしていないか
- 曲の前後や余韻が途中で切れていないか
- 小さい音量でも主役が聞こえるか
- ヘッドホンとスピーカーの両方で低音が過剰でないか
- WAVを書き出した後、別のプレイヤーでも再生したか
録音・ミックス段階の確認は、関連記事「DTMで音が小さい・音割れするときの確認ポイント」も参考にしてください。完成音源の音量は、ピーク、LUFS、True Peakと実際の聞こえ方を組み合わせて判断しましょう。
